日本女子

村主章枝//
世界選手権において、銅2つ、銀1つと日本人最多の3つのメダルを持っている。
03年グランプリファイナル優勝。ここから日本の快進撃は始まった。
元祖コーエンストッパー。
まだまだ若いけれど、それだけ若いころから日本を背負っていた息の長い選手。
そして「一人で枠を2つとれる選手」「追い詰められて実力以上をだせる選手」それはとても頼もしい。
「表現力」ばかりがクローズアップされていますが、まずは目をひくのがそのトゥジャンプの正確さ、高さ。そしてジャンプを降りた後のフリーレッグ(氷についていない足)とスケートの伸び方はとても綺麗。
逆にサルコウだったり、ループだったりのエッジ系ジャンプは苦手。
特にループジャンプは本当に苦手らしく、単独でも一度もとんでいない。
それは「グッドウェルバランス」バランスのとれた演技として評価されず、おまけに身体がそんなに柔らかい選手でなくキャメルやレイバックのスピンでレベル4がとれず、3回転3回転がとべずで新採点には不向きな選手。(しかし以前は5種のジャンプを必ずいれなくてはいけなかったので、楽になったといえば楽か)
今季はそのハンデを補うためドーナツスピンや難しい入り方からのキャッチフットスピンなども習得。
とてつもない努力家で、それはスケート依存症ではないの?と危惧するくらい、ソルトレイク銀メダリストのティム・ゲーブルさえ「フミエは練習しすぎ、もっと力をぬいたほうがいい」とさとすくらいの完璧主義者。
皮肉にもそれが災いして今季はシーズン当初から飛ばしすぎた結果股関節の怪我に悩まされ、フリーでは調整不足が目についた。得意としていた「音楽の解釈」があまりできてなかったような…。高橋をはじめ同じ曲で演じた選手のクオリティが高すぎたせいもあったのかもしれませんが。
毎年個性的で印象深いプログラムを踊り、それをすべて踊りきるだけではんく、選曲から衣装、そして最後のおじぎのポーズまで「演じる」完璧さは、もうどんな言葉もあてはまらないくらい、ただただ美しい。
あとはとても綺麗なエッジで滑るスパイラル。あまりとりただされていないけれど、足元はクワンの次くらいに綺麗なんじゃないのかしら。
「裏があるんではないの!?」とあせるくらいファンサービスに特化しか選手で、観客を喜ばせることを生きがいとしている。エキシビションプログラムも毎回凝っていて、アメリカのCOIにも出場して人気を博すなど、プロになっても安定した収入をのぞめそうな一人。(笑)
口調がふわふわしているせいで、マイペースで不思議ちゃん(という歳ではないけれど笑)なイメージがありますが、ことスケートに関してはとても貪欲で執念深い選手。勿論いい意味で。


ここ数年の彼女のプログラムは全て好き。パンツスタイルで世間をあっといわせたローリングストーンズの03-04のSP「黒く塗れ」、「カルメン」「ピンクパンサー」も好みはわかれるでしょうが素敵です。今季のSP「トカ・オリージャ」の最後の対角線ステップは女子シングルにおいてのナンバーワンステップといっても過言ではありません。



荒川静香//
ご存知トリノ五輪金メダリスト。
そして日本人3人目の世界選手権金メダリスト。
華々しい功績と素晴らしい技術をもっていますが、金メダルをとるまではアップダウンが激しいというか、「全ての力を発揮することのない眠り姫」というありがたくない称号をもらっていた。
天才でありながら苦労人。つまりは天才が努力し、それが花開くと、こうなるということ。
イナバウアを流行語にまでおしあげ、そこまでがクローズアップされますが、彼女の魅力ななんといってもその総合的な能力の高さ。
ジャンプは小学3年生で全てのトリプルジャンプをとぶし、3回転3回転のコンビネーションを決めることもできる。
スピンをみてみても、美しいドーナツスピンをはじめ、柔軟性をいかんなく発揮してビールマンスピンも習得。
スパイラルも難しいポジションをこなすなどどちらかというと新採点システムにあった選手。しかし、タラソワに師事していただけあって、音楽を大事にする選手。技術優先か芸術優先化で葛藤はありました。
なんといってもスケート技術の高さ。そのすべりはとても深く、重厚感があり、きちんとしたエッジでステップをふめるので、振り付け師にとっては「振付けてみたい」選手のひとりではないでそうか?
普段はさばさばしていて自分のことをハッキリと主張し、24歳とは思えぬ冷静さで、インタビューも言葉を選んで対応している。
でも普段はアイスをこよなく愛す、スワローズファン。でも所属は西武(笑)
最近プロに転向し、試行錯誤しているみたい。
そう、「プロは自分を安売りしてはいけないの。」
練習時間がないとはいえ、昨日のサッカー日本代表特番でいつもと変わらない演技をしたのは空いた口がふさがりませんでした。
仕事と割り切っているとはいえ…。ローリスクハイリターンというの?
サッカーファンとして、フィギュアファンとしてあたしはあれが許せなかったわ。


オススメプログラムは02〜04まで使ったSP「白鳥の湖(サイバースワン)」03-04のLP「トゥーランドット」04-05のEX「キャッツ」



恩田美栄//

世界一といっていいほどの高いジャンプはあの伊藤みどりを彷彿とさせる。
世界選手権の最高位は5位、他の選手と比べると実績はないものの、その底知れぬ明るさとダイナミックな演技は「日本人らしい」といえる選手。
旧採点システムでは技術点は高くても芸術点でドッとさがり、新採点システムではジャンプ以外も凝らなくてはいけなかったため技術・芸術ともによくない位置に落ち込む。
それでも現役続行を宣言。
荒川とは年も近いし同じ大学卒ということで仲良し。「ヨシオ」「シズオ」と呼び合う仲…かは知りませんが(笑)彼女をヨシオと名づけたのは他でもない静香。
笑顔がチャーミングで、普段はムードメイカー的な存在。
演技前にてのひらに人の字をかいてのみこむのは有名な話。
まず彼女を語る上でなくてはならないのがルッツジャンプ!あまりにも高すぎてカメラに入り込めないほど。
逆にスピンやスパイラルの姿勢において致命的な身体の堅さ、おまけにスケート自体ののびがないので今後を生き残るのはそこを改善しなければならない。
それをうまくカバーした今季SP「マダム・ボバリー」はとても素敵。表情が愛らしかったですよね。
先生のジョゼ・シュイナールさんは現役時代も有名な美人選手(もちろん実力も折り紙つき)で、今もその美貌はおとろえ知らず。うらやましい。
一時は「トリプルアクセル飛べ」だの心無いメディアのプレッシャーから調子をくずしましたが、今は大人になったのか全てをひょうひょうと受け止めている。サバサマとしていて人なつっこくて、とってもいい女の子。
05年全日本選手権では素晴らしいパフォーマンスをし、フィギュアスケートファンの涙腺を全てもっていった。現地でみていたアレクセイ・ヤグディンスタンディングオベーションをした数少ない選手のうちのひとりです。


オススメプログラムは上記の「マダム・ボバリー」と04-05のSP、女子十二楽坊の「自由」
前者はキュートさが、後者はありあまる元気のよさが好印象。



中野友加里//
今季急成長をとげた選手。一時は怪我、若手の台頭とともにペア転向も考えましたが、佐藤コーチのもとスケートを基礎からたたきなおす。
代役出場のグランプリシリーズはトリプルアクセルをきめたカナダ大会で3位、初めて出場したNHK杯では村主、安藤だけではなくマイスナーやコストナーといった海外有力選手をもぬいて優勝、そのまま勢いはとまらずグランプリファイナルで3位!
一躍日本女子トップ選手になり、五輪選考会を一般・メディアひっくるめてひっかきまわした張本人。
まず05年5月のドリームオンアイスでみせた「アメイジング・グレイス」はベストパフォーマンスといっていいでしょう。
コンパルソリーを思わせるたくみなエッジ使い、キャメルスピンのバリエーション、回転軸、速度共に日本一といっても過言ではないし、そこからのドーナツスピンの美しさはもはや世界一。
悲願の世界選手権では「初出場で5位」という快挙を成し遂げ、「日本女子に死角なし!」を全世界にアピールしました。
ジャンプ自体は決して悪くないのですが、特にトゥジャンプにおけるフリーレッグが美しくなく、軸もまがることが多い。
そしてループジャンプに苦手意識をもっており、それがGOEでプラス評価になかなかならない原因のひとつですが、そこを直すと更に代表に近くなるはず。
一年ですべてを成し遂げた彼女は本当に今沈みがちな若手選手のお手本。
基礎は大事だということ。をハッキリと示しました。
しかし基礎練習はとても辛く根性がいるもので、それを支え続けたのが彼女の負けん気の強さ。とても上昇志向が強く、時にはそれがステップアップのための弊害となっていましたが、今年は繊細なピアノ曲からコメディタッチなバレエ曲まで踊りきり「音楽表現」の重要さを知らしめたのではないでしょうか。


オススメプログラムは勿論EX「アメイジング・グレイス



太田由希奈//
02ジュニアグランプリファイナル優勝、03ジュニア世界選手権優勝、04四大陸選手権優勝。
その華々しい経歴と「今までの日本人とは違う」世界に通用するバレエやモダンダンスで培った表現力と長い手足、スタイルのよさで将来を約束されていた選手のひとり。
しかし翌シーズン足をいため長期離脱、フィギュアスケートブームに一人乗り遅れる始末。
今年3月にショーでカムバックしたが、二十歳という年齢的にも厳しくなった上、今の日本女子シングルは最盛期、新採点システムに慣れておらず、おまけにジャンプが苦手…と八方塞り。
そのひとつひとつの演技の美しさからファンは多いが、正直来季が勝負どころ。
まず特筆すべきはその上半身の柔らかさ、それでいえ決してはしたなく見えない上品さ、所作の美しさ。
特に完全に腰を折った形を保てるレイバックスピンは「花が咲くようだ」といわれるほどに美しく、海外での評価も高い。
氷にすいつくようなスケーティング、スパイラルのフリーレッグの高さ、手の使い方の上手さ、情緒あふれるステップのエッジワーク。
リンクを文字通り横断するレイバック状態のイナバウアは荒川と双璧。
しかし上記の通りジャンプがなかなか決まらず、怪我あけということで身体も競技用にしぼらなくてはいけないし、サルコウも飛べないのでは話にならない。おまけにスピード感がないので曲を選ぶ選手、オペラやバロック時代の音楽でないと厳しい。
裏を返せばオペラやらせると右に出るものはいない、特に02年の全日本選手権ではジュニア選手にも関わらず4位、LP「トゥーランドット」は本当に素晴らしい出来でした。
そのはんなりとした京都弁と妖艶なしぐさは海外サイトの「美しいスケーター50人(人数はうろ覚え)」に選出されるほど。
リハビリ地がアメリカのコロラドスプリングスだったということもあって海外のファンも多い。
そこではダンスの指導もうけたそうで、「もしかして宮本さんの相手は彼女になるのでは」とまことしやかなうわさがながれていたりする。


オススメプログラムは02-03のLP「トゥーランドット」と04-05二度しかみれなかったLP「蝶々夫人」この完全版がみたいし、ぜひとも安藤と蝶々対決させてほしい。



安藤美姫//
ジュニアグランプリファイナル優勝、全日本ジュニア選手権優勝、全日本選手権優勝、世界ジュニア選手権優勝、世界選手権4位。
4回転サルコウに成功し、その翌03-04シーズンになされた偉業である。
愛くるしい笑顔とその実績で一躍アイドル的人気になり、今日のフィギュアブームの火付け役となった。
自意識過剰で目立ちたがり屋の巣窟といっていいフィギュアスケート界で、彼女だけが特出して「自分が中心でなきゃ気がすまないワガママ娘」としてみなされているのが少しかわいそう。まあ、その発言の意味不明さというか短慮なところが嫌われているのかもしれませんが。あくまでもスケーターとしてみてあげてください。(笑)
特筆すべきはそのジャンプの質の高さ。
ジャンプの高さは恩田などと比べると低いが、筋肉質な身体も助けて「ふみきり、飛距離、回転速度、ランディング、その間の正確な腕のひき」や「足だけでなく身体でとぶジャンプ」は若い世代のお手本にしていいくらい素晴らしい。
「飛んでから回転し、完全に回転してから降りる」3ルッツ3ループのコンビネーションジャンプは彼女にしかなせない天性のものである。
しかしそれ以外はまだ雑というか粗野というか、特にスパイラルでのぐらつきや表現力はまだまだ。
アメリカに渡りスピンやスパイラルのレベルアップには成功したが、まだまだ「背伸びしてレベルをとっている」「無理している」感はぬぐえない。
そしてスタミナ切れも気になるので、体力トレーニングと基礎トレーニングをすると汚名返上できそう。
しかし彼女のビールマンスピンへのバリエーションはとても綺麗。
繊細なつなぎのステップなどキャロルコーチ仕込みの上品さがきいたSP「戦場のクリスマス」LP「マイ・ファニー・バレンタイン」はプログラムとしてはとてもいいもの。あとは彼女が滑りきれるかどうかだ。
最近はメディアの過剰報道もパパラッチも彼女から荒川・真央に分布されたようで、しっかりスケートに打ち込めそう。この子も勝負の年。


オススメプログラムは05-06のSP「戦場のメリークリスマス」と04-05のEX「ミッキー」



浅田真央//
シニア選手ということで。最後は彼女。
ノービス時代から「彼女は末恐ろしい」と関係者だけでなくファンの間でもささやかれていた。
02年、3フリップ3トゥ3ループの男子でも成功例の少ないミラクルジャンプを決め、04年にはジュニア年代にして全日本選手権2位(恩田・村主を下す)、翌05年にはトリプルアクセルをひとつの演技で2度入れ、女子初のSPでのトリプルアクセルに成功し、若くしてギネスに名前を載せている。
そしてその年から出る大会出る大会全てで2位以上を保持。
ついにはグランプリファイナルで最年少優勝をはたすまでになる。
そのあまりのアクセルの上手さから、着氷はきれいだけど、足より体を先に回転させながら飛んでしまうという「トゥアクセル」といきわめて質の悪いジャンプをとんでいると心配されるが、本人はそんな周りの心配なんてどこ吹く風、我々の想像のはるか斜め上を飛ぶ。
安藤も「トリノ五輪にでて引退する。だって真央がでてくるもの」と及び腰になり、荒川も「真央と戦わないうちに引退したかった」と苦笑するほどの天才。まさにミラクル・マオ
3アクセルの成功率はきわめて高いし、あの安藤でさえ新採点システムになってから回転不足が目立ってきた3ルッツ3ループもお手の物だし、今季LP中盤での3ループ2ループ2ループのコンビネーションジャンプは画期的。
そしてジャンプコンビネーションを全て後半にとべるスタミナを持つ。
スピンは回転速度や軸はまだまだ甘いですが、片手でビールマンポジションをとってチェンジエッジしたり、あいた手も表現につかうなど、幼いころから海外のショーに出演していただけあって細やかな表現がうまい。
普段は焼肉大好きで愛犬エアロにメロメロないたって普通の女の子。そのギャップもあいまっていまやその人気は不動のものに。
もちろんスケート技術も素晴らしく、アイスダンス選手のような深いカーブも描けるし、それが重たく感じられず、スピード感もあり、靴に羽でもついてんじゃないかと思うくらい軽快。
…本当にノービスあがり?


オススメプログラムは04-05のSP「虹の彼方に」